ボトルネック以外への着手は、無意味どころか「改悪」
こんにちは。コミュニケーションデザイナーの東ヤスオです。
今回は組織やチームが抱える課題の解決する方法として、重要な考え方の一つ「ボトルネックを見つける」について。ボトルネックを正しく発見して、その解決にリソースを集中させることが生産性向上につながります。
「ボトルネックを見つける」とは?
「ボトルネックを見つける」とは、組織やチームが抱える根本的な原因を発見するということです。ペットボトルの注ぎ口(ボトルネック)を想像してみてください。液体を注げる量は注ぎ口の太さに依存します。液体の入っている部分がどんなに大きかろうと、注ぎ口の大きさが変わらない限りは注げる量も変わりません。これはつまり、物事の生産性を決めているのは全体に制約を課している一部分であることを意味します。
別の例えで、鎖を想像してみてください。その鎖を両側から引っ張った場合、どの部分でちぎれるでしょうか?もちろん、強度が一番弱い部分です。ですので、鎖全体の強度を高めようとしたときに、この一番弱い部分以外の鎖の強度を高めても全く意味がありません。にもかかわらず、多くの組織やチームでは関係ない鎖に問題があると誤認して強度を高めようとし、自分の組織やチームの問題ではないはずの問題を解決しようとしています。鎖が一番弱い部分、つまり「ボトルネック」となっている部分を改善しない限り、問題は解決しないにもかかわらず、です。
ボトルネックを見誤っていた組織の話
以前、ある企業様から「営業成績が伸びない。営業スキル研修をしてほしい」というご相談をいただきました。実際にヒアリングを進めていくと、営業メンバーのスキル自体には大きな問題がないことが分かりました。むしろ、案件が動き出す前の段階、つまり営業部と製造部の間で情報が正しく共有されていないことが、成約までのスピードを大きく落としている原因でした。
営業スキルという「関係ない鎖」を強化しようとしていた一方で、本当のボトルネックは部門間の連携にあったのです。もしそのまま営業スキル研修だけを実施していたら、時間とコストをかけたにもかかわらず、成績はほとんど変わらなかったはずです。ボトルネックを見誤ると、努力そのものが「マイナス」になってしまう典型的な例でした。
この企業様の場合、実際にボトルネックだったのは、製造部が持っている在庫状況や納期の情報が、営業部にリアルタイムで共有されていなかったことでした。営業担当者は正確な納期を答えられないまま商談を進めており、顧客からの信頼を積み重ねる前の段階で、すでに成約のスピードが落ちていたのです。営業部と製造部が定期的に情報をやり取りする仕組みを整えたところ、営業スキル研修には一切手を付けていないにもかかわらず、数ヶ月後には成約までのリードタイムが明らかに短縮されました。
たった一つのボトルネック以外に手を付けない
まず解決すべきは「ボトルネック」に他なりません。たった一つのボトルネックを見つけ、それ以外を改善しようとすることは無駄ではなく改悪です。時間やコスト、エネルギーといった大切なリソースが取られるだけで何一つ解決しないので、「プラスマイナスゼロ」じゃなくて単純に「マイナス」となります。
自己診断:ボトルネックを見誤っているサイン
- 研修や改善策を実施しても、数字がほとんど変わらないという経験を繰り返している
- 「とりあえずできることから手を付けよう」という発想で、優先順位を決めていない
- 問題の原因について、現場の複数の立場から話を聞かずに対策を決めている
- 同じ課題に対して、毎年似たような対策を打ち続けている
解決策よりもその問題の設定は正しいのか?
「解決策」をいくら考えたところで、その前提となる「問題」の設定が間違っていると意味がありません。例えば離職率の高さに悩む組織が「評価制度がよくない」や「自社に合う人材を採用できてない」という問題を設定し解決しようとしたところで、そもそも職場の人間関係が悪ければ問題は永遠に解決できません。まさにザルに水を注ぐようなものです。
・ある問題を引き起こしているその原因はなんなのか?
・問題の最上流である「ボトルネック」はなんなのか?
正しく問題を設定すること=ボトルネックを見つけることになります。ぜひ組織やチームで話し合ってみてください。目の前の解決策に飛びつく前に、一度立ち止まって「そもそも何が原因なのか」を問い直す時間を取るだけでも、対策の的中率は大きく変わってきます。
なぜボトルネックの特定は難しいのか
ボトルネックの特定が難しい理由の一つは、組織の中で立場によって「見えている問題」が異なるためです。営業部から見える問題と、製造部から見える問題、経営層から見える問題は、それぞれ違う場所を指していることが少なくありません。それぞれが自分の立場から見える範囲だけで問題を設定してしまうと、本当のボトルネックが別の場所にあることに気づけません。
この点は、組織やチームで本当に必要なことは「共通言語」ではなく「共通解釈」の記事でも触れている通り、立場の異なるメンバー同士が同じ事実をどう解釈しているかを揃えていく作業と、密接に関わっています。ボトルネックを特定するには、立場を越えて対話し、それぞれの見えている景色を持ち寄る場が必要になるのです。
また、ボトルネックの特定が難しくなる、もう一つの理由があります。それは、ボトルネックとなっている部門や担当者を「責める」ような空気になりやすいことです。原因を指摘された側が身構えてしまい、必要な情報を出し渋ってしまうと、正確な実態が見えなくなります。ボトルネックを見つける作業は、誰かの責任を追及するためのものではなく、全体の生産性を上げるための共同作業だという前提を、最初に共有しておくことが欠かせません。
よくある質問
Q. ボトルネックは、一度見つければそれで終わりですか?
いいえ。あるボトルネックを解消すると、次に別の部分が新たなボトルネックになることがよくあります。継続的に「今、一番制約になっているのはどこか」を見直す必要があります。
Q. ボトルネックを特定するには、どこから手を付ければいいですか?
まずは結果(数字や現象)から逆算して、どの工程・どの関係性がその結果に最も影響を与えているかを、複数の立場から話を聞いて洗い出すことをおすすめします。
Q. 経営層と現場でボトルネックの認識がずれている場合、どうすればいいですか?
どちらか一方の認識だけで進めるのではなく、両者が同じ場で事実を出し合い、対話を通じて認識を揃えていくプロセスが必要です。
Q. ボトルネックを指摘すると、担当部署との関係が気まずくなりませんか?
「誰の責任か」ではなく「全体のどこに制約があるか」という視点で話を進めることを意識してください。担当者個人や部署を責める場ではなく、共同で解決する場だという前提を、事前に共有しておくことが有効です。
この「ボトルネックの特定」という考え方は、組織向けの行動変容研修でも使っている制約理論(TOC)そのものです。「行動デザインの6STEP」というフレームワークの詳細は、こちらのnote記事でも解説しています。立場の異なるメンバーが対話を通じてボトルネックを浮き上がらせる場として、レゴ®シリアスプレイ®メソッドを活用した研修を活用いただくこともあります。詳しくはサービスページでもご紹介しています。
ではまた!