チームワーク向上に「知識」より「体験」が効く理由
「コミュニケーションが大事」「信頼関係が大事」——多くの人が、これを知識としては知っています。書籍や研修で聞いたことがない人は、むしろ少ないのではないでしょうか。それでも、実際の職場の関係性が変わらないのはなぜでしょうか。
「チームワークが大事」だと知っていても、変わらない現実
チームワーク向上に関する情報は、すでに世の中に溢れています。それでも多くの組織が同じ悩みを繰り返しているのは、知っていることと、実際にできることの間に、大きな差があるからです。
「もっとオープンに話しましょう」と会議で言われても、その場が本当に安心して話せる空気でなければ、誰も本音を言いません。知識として正しいことを伝えるだけでは、行動は変わらないのです。
実際、こんな企業がありました。管理職向けに「傾聴の重要性」をテーマにした研修を毎年実施していましたが、部下からのアンケートでは「上司は話を聞いてくれない」という声が毎年変わらず上位に挙がっていました。管理職自身は「傾聴の大切さは十分理解している」と答えていたにもかかわらず、現場の実感は変わらなかったのです。知識としての理解と、実際の行動の間には、明確な溝がありました。
なぜ「知る」だけでは行動が変わらないのか
知識は頭に入りますが、行動や関係性は、頭で理解しただけでは変わりません。人が本当に変わるのは、実際に「体験」を通じて、感情や身体を伴った学びを得たときです。
これは特別な話ではなく、多くの人が経験的に知っていることでもあります。研修で聞いた話は数日で忘れてしまうのに、印象的な体験は何年経っても覚えている、ということはないでしょうか。
「手を動かす」ことが学びを加速させる、科学的な理由
MITメディアラボのシーモア・パパート教授が提唱した「コンストラクショニズム」という理論では、脳細胞の70〜80%は手とつながっており、人は何かを作るときに新しい知識を構築するとされています。つまり、手を動かすという体験そのものが、学びを深める仕組みになっているのです。
座って話を聞くだけの学びと、実際に手を動かして何かを作る学びでは、記憶に残る深さも、行動が変わる確率も、大きく異なります。この考え方は、組織のパーパスや理念浸透にも当てはまります。理念を「知っている」ことと、理念が「自分ごと」になっていることは全く別です。詳しくは組織のパーパス・理念浸透にレゴ®シリアスプレイ®メソッドが効く理由の記事でも解説しています。
座学中心の研修に共通する落とし穴
座学中心の研修は、参加者の満足度アンケートでは高い評価を得やすい傾向があります。分かりやすい話は「勉強になった」という感想を生みますが、それがそのまま行動の変化につながるとは限りません。
むしろ、満足度が高い研修ほど「いい話を聞けた」という体験で終わってしまい、翌日からの行動が変わらないまま忘れられていく、ということも珍しくありません。この現象は、チームビルディング ワークショップの選び方の記事で紹介した「②知識・スキル習得型」の手法だけに頼った場合に起きやすい落とし穴でもあります。
自己診断:知識に偏っていないか確認しましょう
以下の項目に当てはまる場合、知識のインプットに偏っている可能性があります。
- 研修後のアンケート評価は高いが、現場の行動変化を実感できない
- 同じテーマの研修を毎年実施しているが、課題が変わらず繰り返されている
- 「大切さは分かっている」というメンバーが多いのに、実際の行動は変わらない
体験を通じてチームワークが変わるとはどういうことか
チームワークが本当に向上した状態とは、単に情報共有や役割分担ができている「連携」の状態から、メンバー同士が自発的に動きを察知し合う「連動」の状態に近づくことです(この違いについては「連携」と「連動」の違いとは?で詳しく解説しています)。
この変化は、話し合いだけでは生まれません。実際に一緒に何かを作り、価値観を共有し、支え合えたという成功体験の積み重ねが必要です。チームの発達段階(タックマンモデルで言えばフォーミングからストーミングへの移行)を進めるためにも、体験は欠かせない要素です。また、成功循環モデルの記事でも解説した通り、関係の質を高めるためにも、知識の共有だけでなく体験の共有が土台になります。
体験をつくるために、今日からできること
大掛かりな仕掛けがなくても、体験を増やすためにできることはあります。
- 振り返りの時間を必ず設ける:
プロジェクトや会議が終わったら、結果だけでなく「どう感じたか」を話す時間を数分でも作る - 成功体験を言語化する:
うまくいったことを、なんとなく流さずに「何が良かったのか」をチームで言葉にする - 小さな「一緒に作る」機会を意図的に設計する:
議論だけで終わらせず、模造紙に書き出す、簡単な試作品を作るなど、手を動かす工程を挟む - 「話す」だけでなく「動く」場を取り入れる:
座ったままの会議ではなく、立って行うワーク、体を動かす時間を意識的に組み込む
こうした小さな積み重ねが、知識だけでは生まれない「体験による学び」の土台になります。ただし、日常業務の中でこうした工夫を継続するには限界もあります。変化を大きく前進させたい場合は、あえて日常から離れた場で、腰を据えて体験する機会を作ることも効果的です。
体験型ワークショップという選択肢
「知る」ではなく「体験する」ことを軸にした手法の一つが、レゴ®シリアスプレイ®メソッドを活用した研修です。レゴ®ブロックを使って自分の考えや価値観を形にし、それをチーム全員で共有するプロセスそのものが、体験を通じた学びになります。
詳しい効果や進め方については、レゴ®シリアスプレイ®メソッドを活用した研修の詳細記事をご覧ください。
よくある質問
Q. 座学研修をすべて体験型に置き換えるべきですか?
必ずしもそうとは限りません。専門知識の習得には座学が適している場面もあります。知識のインプットと体験による学びを、目的に応じて組み合わせることが大切です。
Q. 体験型研修の効果は、どのように確認できますか?
研修直後の満足度だけでなく、数ヶ月後の行動変化や、チームの雰囲気の変化を確認することをおすすめしています。
Q. 体験による学びは、どのくらい持続しますか?
一度の体験だけで永続するわけではありません。継続的に体験の機会を作ることで、学びが定着していきます。
Q. 体験型研修は、どんな規模のチームでも実施できますか?
はい。数名の小さなチームから、大人数の全社イベントまで、規模を問わず実施可能です。
さいごに
チームワークを向上させたいと考えるなら、「何を伝えるか」より「何を体験してもらうか」を先に考えることをおすすめします。知識は行動のきっかけになりますが、行動そのものを変えるのは、いつも体験です。知っていることと、できることの間にある溝は、体験によってしか埋められません。こうした変化は、一度の研修だけで完結するものではなく、日常業務の中での小さな体験の積み重ねと組み合わせることで、より確実なものになります。まずは小さな一歩から始めてみてください。こうした体験の積み重ねは、チーム全体の文化としても根付いていきます。
レゴ®シリアスプレイ®メソッドを活用した研修にご興味を持たれた方は、お問い合わせフォームで「レゴ・シリアスプレイ」を選択の上ご連絡ください。