部下育成がうまくいかない本当の理由|多くの管理職が見落としているポイント
こんにちは。コミュニケーションデザイナーの東ヤスオです。
「部下育成の本を読んだ、研修も受けた。それでも部下がなかなか育たない」というご相談をいただくことがあります。この記事では、多くの管理職が見落としている、部下育成の本当のポイントについてお伝えします。
なぜ「本」や「研修」だけでは部下が育たないのか
書店には部下育成に関する本がたくさん並んでいます。「傾聴のスキル」「フィードバックの型」「目標設定の方法」など、どれも役立つ内容です。しかし、多くの管理職の方が、これらのスキルを学んでも「現場で使うと、なぜかうまくいかない」と感じています。
理由は、スキルや型そのものが間違っているわけではなく、その型を使う土台となる「関係性」ができていないことが多いからです。土台のない状態でどれだけ立派な型を積み重ねても、いずれ崩れてしまいます。同じ質問の仕方をしても、信頼関係のある上司からの質問と、そうでない上司からの質問では、部下の受け取り方がまったく違います。
実際にあった、部下育成でのすれ違い
以前、ある管理職の方が「部下育成のために、1on1を毎週やることにした」と話してくれました。本で学んだ通り、オープンクエスチョンを使い、傾聴を心がけていたそうです。ところが数ヶ月経っても、部下からは「特にありません」という返答が続き、手応えを感じられずにいました。
話を伺うと、その方は「部下の話を聞く」ことには熱心でしたが、自分自身が部下にどう見られているかを振り返ったことはなかったそうです。実際には、部下はその上司に対して「本音を話しても、どうせ評価に影響する」という警戒心を持っていました。質問のテクニックをどれだけ磨いても、その警戒心が解けない限り、本音は出てきません。
その後、この管理職の方は1on1の質問内容を変えるのではなく、まず自分自身が「評価者」ではなく「支援者」として関わろうとしていることを、言葉にして伝えることから始めました。「今日は評価とは関係なく、率直に聞きたい」と一言添えるだけで、部下の答え方が少しずつ変わっていったそうです。最初は半信半疑だった部下も、それが毎回一貫していることに気づくと、少しずつ本音を話すようになっていったといいます。質問の型そのものより、その手前にある前提を共有することの方が、はるかに重要だったのです。
自己診断:部下育成が空回りしているサイン
- 1on1や面談で、部下から「特にありません」という返答が多い
- 部下育成のために本を読んだり研修を受けたりしているが、現場での変化が感じられない
- 部下が本音を話さないのは「性格の問題」だと考えている
- 自分自身が部下からどう見られているかを、振り返ったことがない
部下育成の本当のポイント:3つ
1.スキルより先に、関係の質を整える
これは成功循環モデルの記事でもお伝えしている、「関係の質が思考・行動・結果の質を左右する」という考え方そのものです。育成スキルを学ぶ前に、まず部下との関係の質がどの段階にあるかを見極める必要があります。
2.「素直さ」を引き出す関わり方をする
1on1ミーティングの最重要ポイントでもお伝えした通り、部下育成の成果を決めるのは、質問の技術ではなく、部下が安心して本音を話せる関係性です。「話す内容」より「関わり方」に意識を向けることが、育成の出発点になります。
3.「行動できない理由」を分解して関わる
部下が指示された通りに動けないとき、単に「やる気がない」と判断してしまうのは危険です。行動できない人の3つのパターンの記事でもお伝えした通り、Why・What・Howのどこが理解できていないのかを分解して関わることで、育成の的中率が大きく変わります。
「やり方」だけを教えても変わらない理由
部下育成においても、コミュニケーションはやり方ではなく「在り方」の記事でお伝えした考え方がそのまま当てはまります。「部下の話を聞く」という行為そのものは同じでも、そこに部下への好奇心が伴っているかどうかで、伝わり方は大きく変わります。テクニックとして「聞く」のではなく、本気で「知りたい」と思って向き合っているかが問われます。部下からすると、この違いは驚くほどはっきり伝わります。マニュアル通りの質問をしている上司なのか、本当に自分のことを理解しようとしている上司なのかは、言葉の選び方や表情、相槌のタイミングなど、あらゆるところに表れてしまうものです。
よくある間違ったアプローチ
- 育成方法の「型」や「フレームワーク」だけを次々と試す
- 部下育成の課題を、部下側の性格や資質の問題だと決めつける
- 自分自身が部下からどう見られているかを振り返らない
- 心理的安全性が保たれていない状態のまま、1on1の頻度だけを増やす
心理的安全性そのものについては、心理的安全性を組織やチームで浸透させるためには?の記事でも詳しく解説しています。部下育成がうまくいかないとき、その土台にこの心理的安全性が欠けていないか、あらためて確認してみることをおすすめします。心理的安全性を作る第一歩は、部下に「弱みを見せてもいい」と言葉で伝えることではなく、上司自身が先に弱みや分からないことを見せることです。この順番を間違えると、どれだけ言葉で安全性を訴えても、部下には伝わりません。
関係の質を体験を通じて整える方法
こうした「関係の質」は、座学だけでは実感しにくいものです。管理職同士が本音を語り合い、部下との関わり方を見直す体験型の研修として、管理職研修にレゴ®シリアスプレイ®メソッドが効く理由もご覧ください。また、個別に部下育成の関わり方を見直したい方には、1on1コーチングもご検討いただけます。自分一人で振り返るよりも、第三者と対話しながら整理する方が、思い込みに気づきやすくなります。
よくある質問
Q. 部下育成の本を読むこと自体は無駄ですか?
無駄ではありません。知識として型を知っておくことは土台として有効です。ただし、その型を使う前提となる関係性ができていないと、効果が半分以下になってしまう、ということです。
Q. 部下との関係の質は、どれくらいの期間で変わりますか?
一度や二度の1on1で大きく変わるものではありません。日々の関わり方の積み重ねによって、少しずつ変化していきます。焦らず、継続することが大切です。
Q. 複数の部下を同時に育成する場合、同じ関わり方でいいですか?
基本的な姿勢(好奇心を持って関わる、素直さを引き出す)は共通ですが、部下それぞれの関係性の状態は異なります。一人ひとりに合わせて関わり方を調整する必要があります。
Q. 部下育成に悩んでいることを、上司や周囲に相談してもいいですか?
もちろんです。管理職研修などの場で、他の管理職と悩みを共有することで、「自分だけの悩みではなかった」と気づけることも多くあります。
Q. すでに関係がこじれてしまった部下にも、関わり方を変える効果はありますか?
時間はかかりますが、効果は期待できます。ただし短期間で変化を求めるのではなく、まず自分自身の関わり方を変え続ける姿勢を、根気強く見せていくことが前提になります。
さいごに
部下育成は、スキルや型を学ぶだけでは完結しません。その土台にある関係の質を整えることこそが、育成の本当の出発点です。まずは、部下からどう見られているかを、あらためて振り返ってみてください。その振り返りこそが、育成という長い道のりの、確実な第一歩になります。
ではまた!